アカギ十周忌法要 福本伸行氏弔辞 全文

10/15発売の近代麻雀からアレします。みんな近代麻雀買おうね。

赤木しげるさん。
あなたは、架空の人です。
20年ほど前に、僕の「天」という麻雀漫画で姿を現し、
それが現在の「アカギ」という漫画につながっています。
つまり、あなたは僕が生み出したいちキャラクターです。
ですから、僕はあなたの産みの親ということになります。
しかし、僕にとって、あなたは兄であり、師であり…
あるいは、子供の頃慕った、ちょっと悪だけど、魅力的な親戚の兄貴、おじさんといったところでしょうか。
あなたは、今から10年前に亡くなりました。
「アカギ」という連載をしているから当然かもしれませんが、10年経っても、あなたは僕の中で全く色褪せていません。
いや、あなたの「死」の年齢に僕自身が近づくにつれ、ますます、あなたは僕の中で光り輝いてきています。
時々、考えることがあります。
僕は、あなたに恥じない生き方ができているだろうか…と。
言うまでもなく…というか、僕はそのことにまったく自信がありません。
あまりに、届きません。圧倒的に、届かない。
僕にできるのは、時々思いをはせることぐらいです。
あなたを見失わないように。
でも、今思い返すと、あなたは、あなたの人生は、例えば、
人類の進歩とか、なにか…文化的功績とか…そういったモノとは無縁の人生だった、と思います。
残されたのは、いくつかの伝説だけです。
そう。あなたは成功した人ではありませんでした。
成功し、お金を稼ぎ、欲しいモノを手に入れ、人を巻き込み、権力をつかみ、たくさんの部下を持つ…。
そんなキラキラ…あるいはギラギラした金色(こんじき)の、金色(きんいろ)の人生ではありませんでした。
ま逆です。
他人とベタベタせず、潔く、すさまじく爽やかな…でも、だからこそ、たまらなく眩しい…
そんな銀色の人生だったと思っています。
そんなあなたに、僕はこれからも憧れ続けるでしょう。
生涯、届きませんが、憧れ続けるでしょう。
今日、あなたのは墓を削らせていただきました。
これは、僕の漫画「天」の最終話のエピソード、それをそっくり真似た行為です。
あなたの墓の欠片を、僕は持ちます。
いや、僕だけではなく、日本中のあなたのファンが持つことになるでしょう。
あなたの欠片は、日本に分散、飛散していくでしょう。
その行為を、あなたは空の上から苦笑するかもしれません。
でも、すみません。許してください。
あなたの欠片を持つことで、僕たちは少し力をもらえる気がします。
踏み出す勇気を、少しもらえる気がします。
空の上から、そんな僕たちを見守っていただければ…と思っています。
南無阿弥陀仏…。

赤木しげる10周忌法要施主、そして赤木しげるのファン代表、福本伸行